人にものを教えるということ、部下や後輩を育てること、本当に気力と労力を使いますよね。
部下後輩が言ったことをすぐ理解してやる気を持って仕事に臨んでくれたら・・・
手が離れて下を教えてくれるようになってこれば、本当に楽できるはず・・・
でも、実際はそこまでなかなか進んでいきません。
これは、育成指導は、教える方に準備、教わる方にも準備が必要と分かっていないからです。
相手は育てられているつもりがない上に、うまく話が伝わらない。
この内容が、そんな方の悩み解決につながればと考えます。
まずは「わかる」「教える」のポイントを3つずつお伝えします。
上手に育成指導、やる気の出る言い方/教え方
「わかる」を理解して「教える」を理解する
わかる
「わかる」というのは、とても曖昧な事です。
「教える人」と「教わる人」の間には、それぞれの認識のズレがあります。
認識のズレを埋める努力を怠ることが、お互いの軋轢を生んでしまいます。
まず、本当の意味で相手が「わかる」を、「教える人」は知っておく事が大事です。
ここでは、「わかる」のことを伝えていきます。
一口にわかるにといってもレベルがある
まず「わかる」というのは、実は「教わる側の自覚の違い」でレベルが違ってくるのです。
それらのレベルの違いと移り変わりを3つのステップで簡単にしていきます。
レベル1 わかっていない状態
=学習以前、何もわからず何も実行できない状態。
↓
レベル2 わかったつもりの状態
=最低限の学習をして、学んだことをそのままできる。
ある程度分かっていて、作業者として仕事に困らない状態
↓
レベル3 かなり深くわかった状態
=さらによく知っている人(教える側)とも意見を交換でき、理解を深める事ができる。
学習項目のアレンジ、周囲に伝播させることができる状態
レベル1からレベル2は「わかっていないという自覚」があるので自然と進んでいきます。
しかし、ほとんどはレベル3まで進まず、レベル2の「わかったつもり」で止まってしまします。
この理由は、とても単純で作業者として仕事に困らなくなってしまうためです。
会社も上司もレベル3まで育つことを求めており、ここがすれ違いの原因となります。
実は、レベル3まで進めていくには、「動機」が必要なんです。
あなたはレベル2の状態で、このままでは駄目であるということをはっきり伝え、そのうえで学習への動機づけをして、達成の報酬メリットの用意があることを伝えることが必要です。
わからない、わかっていないと自覚する必要がある
レベル2では駄目だとはっきり伝えることは、「わからない」「わかっていない」と自覚させることです。
これには、方法は2つあると考えています。
① 叱責する方法
単純なのは「君はわかっていない、もっと深く理解せよ」とストレートに言う方法です。
この方法は、「教える側」と「教わる側」の関係がよくないと対立が起こることもあるので、注意が必要です。
基本、得策ではありません。
ただ、私は事前に伝えたルールの上で絶対にしてはいけないことをやってしまった際には有りと考えています。
※注意としては、感情で叱責してはいない、ルールの上と納得させれる言葉である必要があります。
② 自分で気づく方法(学ぶ側が「わからないといけない」と気づく)
自分が「困っていない」状態から「わからないといけないと考える」状態に気持ちを変化させればよいのです。
変化させる方法として、心理学上の法則「ピグマリオン効果」の利用があります。
ピグマリオン効果とは、ある人に「こうなってほしい」という期待をかけると、期待をかけられた人は「期待どうりになる」という心理学上の法則です。
つまり、「教える側」が「教わる側」に期待を寄せていくことで、「教わる側」は「期待を裏切れない何とかしないといけない」と一生懸命頑張るようになるのです。
例としては・・・
資料作成に正確でも時間をかけてしまう部下に「スピード面」で課題を感じていた時
この間の資料をあと2日で出来ないかな
先方もそれ以上待てないらしい
きびしいですね、50部は必要ですから
また、他部門も確認して資料自体も
綺麗につくらないといけないですから
3日提出が前提で、それが第一なんだ
正確性よりもスピード重視でやってほしい
そういわれましても・・・
(仕方ないでしょう)
案の定、スピード面に課題を感じず正確性を求め、スピードを上げる努力をしません。
そこで、
君の作った資料はわかりやすく正確だからみんな喜ぶんだよ
俺だけじゃない、先方もみんな楽しみにしてるんだよ
早く見せて、説明してくれよ
・・・わかりました。
(そんなに期待されてるなら何とかしてみよう)
どうでしょうか?
こんなに簡単ではないかもしれませんが、スピード面の課題に取り組ませている事がわかります。
以上の事から、このままでは駄目であると伝えたり気づかせることで、次のレベルへステップアップさせます。
自覚させる事が、レベルアップしていくための「学習への動機づけ」となっていきます。
わかりたいと思わせる必要がある
前述での学習への動機付けには「わからないといけない」と、もう一つ「わかりたい」と進んでやりたくなること、があげられます。
「わかりたい」と思わせるには「達成の報酬を用意する」ことです。
つまり「わかる」ことで受けられるメリットや報酬を得られることがうれしくなるようにするのです。
ポイントとしては相手が望む報酬を知ることですが、これは「教わる側」を観察し会話する必要があります。
特に「教わる側」の性格タイプが重要で、ここでは簡単に3つのタイプを紹介します。
① 目立ちたがり、自意識が高く、影響力を好む
⇒高い評価(リーダー、プロジェクトメンバーなどの役職任命)、報酬、教育担当
② 未知の分野を探求したい、研究したい
⇒調査研究の担当、学会等の参加メンバーに任命する
③ キャリア志向、転職意欲が高い、専門職希望
⇒研修受講機会(海外研修など)や人脈拡大機会を与える
簡単ではありますが、このような「達成の報酬」を用意します。
どのような報酬がよいかは、教えられる側との会話などから判断します。
相手と面接するなど、会話をしながら報酬は具体的に与えていきます。
すると、教わる側は「わかりたい」と思うようになるのです。
例えば、
「入社3年目、担当者として飽きてきていて、部下を持ってみたい人」には
「今のままでは難しいが、リーダーとしてどのように振舞えばいいかがわかれば、リーダーとして推薦する」
のような約束をします。
※但し、要求通りになってきたら、約束を果たさないといけません。
まとめ
これまでの内容が、「わかる」のポイントとなります。
「レベル3:かなり深くわかった状態にする」ために、
「このままでは駄目であるということをはっきり伝え、そのうえで学習への動機づけをして、達成の報酬とメリットの用意があることを伝える」ことがポイントとなります。
教える
すべての「教える」には目的があり、また結果を確認する必要があります。
「教える」ことを上手に行うためにまず必要なことは
「教えるとはどういうことか、なぜ教えるのか、教えた結果何が変わっていなければならないか」
をよく考え、「教える人」が目標(ゴール)イメージを強く持つ必要があります。
ここでは「教える」をお伝えしていきます。
教えるとはどういうことか
「仕事を教える」には「目的を明確」にして、「どうしたらうまくいくか」を考えさせる必要があります。
「教わる側」が考えることで初めて本質から仕事を覚えていけるのです。
怖いのは、上辺だけを覚えただけで「わかったつもり」になると、その後の理解が深まりません。
仕事の本質を考えなくなってしまうのです。
どうしたらうまく教える事ができるのか?
これまで、私が中堅として仕事をしてきた中で、部下を育てる事が上手な人には共通点がありました。
部下がうまく成長できたケースは、どれも「教わる側が問題を前に苦しんでいる状況で、教える側が適切にサポートし、最後は本人が自分で問題を解くことができた」という状況との事です。
漫画のワンシーンみたいですよね。でも、これを違った見方をすると・・・
問題を解く ⇒ 「目的を明確」にする
本人が自分で解くこと ⇒ 「どうしたらうまくいくか」を考える
が出来ているのです。これをサポートする行為も、違った見方をすると・・・
「教える側」が適切にサポートする本人に解決させる ⇒ 「上手に教える」
ということになると考えられます。
反対にうまく伝わらないケースは、日常会話で教える場合にありがちですが「準備もせず、その場しのぎで、知ってること(知識)や経験したこと(ノウハウ)を話すだけ」という状況です。
その場しのぎ ⇒ 「目的を明確」にしていない
知ってることや経験したことを話すだけ ⇒ 「どうしたらうまくいくか」を考えていない
となっているので、これでは「上手に教える」ことができていません。
このことから「教える側」が、どこを教えるかゴールイメージを強く持つことができれば、あとはサポートし本人にゴールさせるでよいのです。
つまり「仕事を教える」には「目的を明確」にして、「どうしたらうまくいくか」を考えさせるのです。
なぜ教えるのか
会社のことをすこし考えてみます。
企業や営利団体、非営利団体は、それぞれの目標を達成するために活動をしています。
目的を達成するためには、ゴールを決め、そのために必要なもの(金、人材、ノウハウ、知識など)を明らかにして、今できる最大目標を目指します。
この際、企業は足りないものがあれば、様々な手段を使って必要なものを用意しなければなりません。
ここでもし、人手が足りないなら、できる人を他の部署から異動させたり、新人を雇ったり、外部調達することもあります。
しかし、連れてきた人材が何もしなくても、そのまま仕事ができるようになることはありません。
スキル、知識を付与して仕事ができるようにしなくてはならないのです。
人材が仕事をできるようになってこないと、仕事の質や成果が見込めず、商品などの売り上げにも影響してくるのです。
ここに企業での教育の厳しさがあり、できる限り短い時間で、仕事をするのに必要な知識を教えなくてはなりません。
教える側と教わる側の責任と義務があるのです。
教えた結果何が変わっていなければならないか
「教えた結果変わっていなければならないこと」ができていますか?
そして「教わる側」の姿が、ゴールイメージ通りであり、望んだ成果が得られてますか?
「教えた効果が得られているか」をわかっておくことが「教える」には必要です。
これは、成果が出なければ、「教えたこと」にならないからです。
効果を確認する方法としては、ここでは2つの方法をお伝えします。
適度に質問をすること
質問をして理解が深まるように、わかっているかを確認する
実際にさせてみて観察すること
教えたことをすぐに使わせ、できているかを観察する
これらを通して、望む結果が得られているか、常に自分自身に問いかけます。
強くゴールイメージを持つことが出来ていないと結果が出ているかは感じ取れません。
2つの方法で、イメージどおりかをチェックすることで、
自身が教えた成果を意識してください。
まとめ
これまでの内容が、「教える」のポイントとなります。
「教えるとはどういうことか、なぜ教えるのか、教えた結果何が変わっていなければならないか」
を常に振り返りチェックしながら、教える際には
ゴールイメージを強く持ち、サポートすることで「教わる側」にゴールをさせること
が上手に「教える」こととなります。
「わかる」を理解して「教える」を理解する
冒頭にもお伝えしていますが、
育成指導は、教える方に準備、教わる方にも準備が必要なのです。
教わる側の準備 ⇒ 「わかる」のまとめ
「レベル3:かなり深くわかった状態にする」ために、
「このままでは駄目であるということをはっきり伝え、そのうえで学習への動機づけをして、達成の報酬とメリットの用意があることを伝える」こと
教える側の準備 ⇒ 「教える」のまとめ
「教えるとはどういうことか、なぜ教えるのか、教えた結果何が変わっていなければならないか」
を常に振り返りチェックしながら、教える際には
ゴールイメージを強く持ち、サポートすることで「教わる側」にゴールをさせること
「わかる」を理解して「教える」を理解することで上手に教える事ができます。
最後に
「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」
山本五十六の数ある名言の一つで、人材育成の基本を説いています。
私も部下を持った時に、あれこれ悩んでいた時に、上司に教わった言葉です。
やって魅せる事
言って聞かせる事
実際にやらせてみる事
出来たら褒める事
上司が教えてくれたのは、これを部下が出来るようになるまで何度も繰りかえすことでした。
失敗したならば、最初に立ち返る、、、そう何度でもです。
そうして、自分も育てられたのだと今なら感じ取ることができ、とても大切なことでした。
上司が教えてくれたのは、冒頭の一文のみですが、実は名言にはまだ続きがあります。
よろしければ、ご自分でも一度続きを調べてみて下さい。
人に「教える」事は自分も成長する機会ですし、楽しむ余裕ができればいいですね。
今回の記事は、仕事を教える事の本質をお伝えしたつもりです。
次回の記事で、本質をもとに教え方・説明の仕方のテクニックをお伝えします。
最後まで読んでいただいたあなたに感謝です。
閲覧頂き、本当にありがとうございました。
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